「新事業!トラル旅行公司」
空色衣装のペルペル族
うーーん、やっぱり簡単には会えないかしら。
マーブルは、この辺りにいるはずって言ってたけど・・・・・・。
いっ、いたーーーーっ!
冒険者の、さにすとさん!?
南北トラル大陸の各地、あのドーム内までも自由に行き来し、あらゆる文化を見て聞いた、めっぽう強い旅の人!
継承の儀においてはウクラマト様を助け、100ペルの元でから10000ペルの鞍を手に入れた実績の持ち主!
心の算盤が言ってるわ!
あなたこそまさに、求めていた最後のピースだって!
私たちの新しい事業に不可欠な、ね!!
コ、コホン。
失礼、ちょっと興奮しすぎたわ・・・・・・やっと会えたものだから。
リープル
はじめまして、先日までアルパカウールの寝具店を営んでいた、商人のリープルと申します。
以後、どうぞお見知りおきを。
あなたのことは、幼馴染のマーブルから聞いたわ。
彼女が行商として歩み出す一歩を後押ししてくれたこと、親友として心から感謝いたします。
そのうえで、今日はあなたと商談がしたいの。
さにすとさん、なっていただけないかしら・・・・・・観光を扱う新事業「トラル旅行公司」の特別顧問に!!
もちろん、報酬はしっかりキッチリ支払うわ!
それだけでなく、お土産品の提供や、観光のいち早い体験など、お得な特典も用意するわよ!
とはいえ、さすがにここで答えを出してというのは急すぎよね。
だから、少しでも興味を持ってくれたなら、どうかコザマル・カのオック・ハヌまで来てほしいの。
詳しい話は、ぜひそこで!
お出迎えするわ、コザマル・カ事業所のみんなとともにね!
リープル
あっ、いた!
いたわ!
さにすとさん、来てくれてありがとう!
いくわよ、せーの・・・・・・
オフォカリー!!
コザマル・カへ、ようこそー!
さにすと
オフォカリー!
リープル
さすがは、トラルの各地を歩いた冒険者。
ちゃんと身についているのね、ハヌハヌ族の挨拶も!
改めて、「トラル旅行公司」を立ち上げたリープルよ。
それから実兄のユーベリと、働いてくれるハヌハヌさんたち・・・・・・みんなでご説明するわ、私たちの新しい商いについて。
・・・・・・さにすとさんは、見たかしら?
ウクラマト様の王位継承式を。
みんなのことを、もっと知り、もっと好きになって、笑って暮らしていける国にしていきたい。
新しい武王様はあのとき、そう仰った。
その言葉に心揺さぶられた国民は、ことのほか多くてね。
王都では今、よその土地やそこで生きる人を知りたいとか、自分たちのことを知ってほしい、って気運が高まっているの。
おわかりでしょう・・・・・・これぞ絶好の商機!
だから私たちは立ち上げたのよ、新たな需要を満たす新事業、観光会社「トラル旅行公司」をね!
ユーベリ
ういうい、その最初の事業所をコザマル・カに開設したのは、大嵐で被害を受けた地域を活性化したいと考えたからなんです。
観光でお金を集めることでね。
もちろんハヌハヌ族の方とは、事前にしっかり相談しました。
その結果、なんとポガ停船所一帯の使用許可をくれただけでなく、幾人も集まってくれたんですよ、自分も働きたいって方々が。
ハヌハヌ族の従業員
そして、そして、知ってもらいたいのです、我々の文化を!
あなたたちがイヒーハナ祭りを復活させてくれたときのように、外の人と交わり、ともに楽しみを分かち合いたい!
そう考えて、我々も観光事業に協力することにしたのです。
リープル
とはいえこれまでのトラルには、観光を扱う事業というのは概念自体が存在しなかった。
初めてだらけで、いろいろと不安があるのよね。
だからどうしてもほしいのよ、南北トラル大陸の各所を歩き、いろんな部族、いろんな土地を目にしてきたあなたの助言が!
―ユーベリ
僕は、主に運営にまつわる庶務を担当しています。
もしご協力いただけるなら、きっと相談させてもらうでしょう、あなたに、日々の細々とした問題解決を、ええ。
―ゲヌハヌ
リープル殿を族長ザヌハリに紹介したのは、行商人として集落に出入りしていたマーブル様でした。
彼女の仲介により、新事業について会談の場が持たれたのですな。
リーブル殿はその場で、集まった我らに対し、旅行公司と観光について丁寧に説明してくださいました。
金銭的な算段や地域にもたらされる影響まで、しっかりと。
―ゼリハリ
商売を通じて、自分も相手も幸せに・・・・・・ペルペル族の流儀って、それは、それは、素敵ですよねえ。
そうして信用に足る商売を続けてきたペルペル族だからこそ、どんな土地へ行っても歓迎されるんでしょうね。
―シェヌハヌ
コザマル・カは大嵐で被害を受けたじゃない?
外からお客人が来れば物が売れ、立て直しに必要なお金が入るし、僕らも働けてお給料をもらえる・・・・・・。
そんな得があるうえに、僕らのことを知ってほしいっていう、部族全体の願いも叶えられるんだ。
となれば、となれば、協力のし甲斐があるってもんだよね。
リープル
トラル旅行公司の具体的な業務は、宿の提供と観光案内よ。
いまは、ウケブさんっていう船大工の力を借りつつ、ポガ停船所の近くで、施設の建築を準備中なの。
もちろんオック・ハヌの人たちとも密にやり取りして、お互いにちゃんと利益が出るようにって動いてるところ。
食材やお土産用の工芸品を取引したりだとか、いろいろとね!
ただ、やっぱり懸念もある。
・・・・・・例えば観光案内について。
お客様は、王都の窓口で予約をとってからこちらへ来るのだけど、そのほとんどが、あなたのようには戦えない人だわ。
当然、彼らを護り、安全に過ごしてもらうための方策が要る。
というわけで、さにすとさんさえよければ、私たちを導いてほしいのだけど、いかがかしら・・・・・・?
商いが軌道に乗るまで、「特別顧問」として!
さにすと
引き受けましょう、その役を!
リープル
ういうい!
心強いわ、ありがとう!
ゼリハリ
でしたら、でしたら、さっそくお願いしたいことが・・・・・・。
わたしたち地元の者たちで、観光案内の計画案を考えてみたところでしてね。
旅人の視点で、ぜひ忌憚のないご意見を伺いたいんですよ。
ユーベリ
であれば、リープルとふたりで行ってきては?
拠点の建築準備は、僕と船大工さんで進めておくから。
リープル
ういうい!
じゃあみなさんは、案内予定の場所で待機しておいて!
私がさにすとさんをお連れするから!
それじゃあ、準備ができしだい声をかけてね。
私も興味あるわ、観光案内について、さにすとさんがどう感じるか。
リープル
準備、できたみたいね。
案内役のみなさんが提案してくれた企画は3つあるから、順番に回っていきましょう。
えーっと、最初は「ゲヌハヌ」さんの企画、地場産業を紹介する「葦の里、水田巡り」から・・・・・・。
それじゃ、いざ金渦水田へ!
―リープル
たくさんの葦が一斉に風になびいている姿って、なぜだか感動しちゃうのよね。
夜になると、たまに蛍も飛んでるのよ。
ゲヌハヌ
ようこそ、ようこそ、ソワソワお待ちしておりました。
早速、自分が担当する観光案内について、ご相談に乗っていただきたいですぞ。
・・・・・・ゴホン。
自分はお客人に、我らの文化を知ってほしい・・・・・・そのためには、葦の水田を見てもらうのが一番と考えております。
なぜならば、葦こそ我らの文化の中心だからですな!
青々と茂るこの水田を見れば、きっと、我らのすべてが伝わる!
心地よき風と、心地よき緑・・・・・・訪れた人は、大満足間違いなし!
・・・・・・と思うのですが、いかがでしょう?
ほかの部族のお客人は、楽しんでもらえるでしょうか・・・・・・。
さにすと
水田を珍しがってくれる部族は多そうだ。
リープル
たしかに、よそには水田自体がないし、興味を引けそうね。
それなら私からは、葦を見る前に集落を散策して、ハヌハヌさんの普段の生活を知ってもらえる案も提案するわ。
あなたたちの文化と葦が密接に関わってると理解してもらって、そのあと水田を見せれば、もっと葦の尊さが伝わるはずだもの!
ゲヌハヌ
なるほど、なるほど、より深く知ってもらうには、伝える順序も大切・・・・・・ということですな。
ぜひとも、参考にさせていただきますぞ。
リープル
そうなると・・・・・・売店で葦細工を売り出せれば、なお効果的ね。
お客様の生活にも役立ちそうな日用品や、お守りみたいなものがあったら売れるかしら・・・・・・。
それじゃ、次は「ゼリハリ」さんの企画案・・・・・・コザマル・カの自然を満喫する「ワクワク河歩き」ね。
竿網桟橋で待ってるはずだから、行ってみましょう。
―ゲヌハヌ
なるほど、なるほど、知ってもらうには、伝える順序も大切・・・・・・と。
―リープル
このあたりの水、とっても綺麗よね!
お魚もたくさん泳いでるみたい。
ただまあ、流れが速いし、お客様が落ちないよう気を配る必要はありそうだわ。
ゼリハリ
あら、あら、いらっしゃい!
早かったですね、クル・シャゲの水の流れを見ていたら、あっという魔でしたよ。
クル・シャゲっていうのはね、ハヌハヌ族の言葉で、「大きな舌」の意味なんですよ。
ふふ、油断してるとぺろっと呑み込まれちゃいそうですよねえ。
リープル
そのお話、いいわね!
ハヌハヌさんたちの言葉って独特だから、由来を知れば、お客様もおもしろいと思ってくれるはずよ。
ゼリハリ
それは、それは、嬉しいですが・・・・・・少し不安でもあるんですよ。
河川をお散歩して、土地にまつわる由来や歴史を聞いてもらう・・・・・・それでお客人に楽しんでもらえるかしら・・・・・・?
さにすと
土地のことを知りながら散歩、楽しそう
ゼリハリ
あら、あら!
旅慣れたあなたにそう言っていただけるなら、なんだかわたし、ホッとしましたわ!
お話を聞いてくださり、ありがとうございます。
いずれにせよ、お客人に「来てよかった」と言ってもらえるよう、リープルさんとも相談のうえで、内容を練らせていただきますわ。
リープル
最後は「シェヌハヌ」さんの企画案・・・・・・美しい景色を紹介する「秘境洞窟散歩」ね。
キキトラ洞の前で待ってるはずだから、合流しましょう。
―ゼリハリ
訪れた人に、楽しいと思ってもらうには・・・・・・。
ふふ、考えていたら、なんだかワクワクしてきました。
―リープル
緑色に光る幻想的な岩肌に、涼やかな空気、水の流れる音・・・・・・なんだか神聖な雰囲気を感じるわね。
シェヌハヌ
やあ、やあ、待ってたよー・・・・・・こんなところにひとりで、僕、正直ちょっと心細かった!
さっそく、案内をさせてもらうよ。
ここキキトラ洞は、生薬の材料や鉱石が採れてね。
昔から「癒しの地」なんて呼ばれてる、特別な場所なんだ。
綺麗なところだから、お客人も楽しめると思うんだよね。
でも道中は暗いし、集落からも遠いから、ここまで来てもらうには、魅力が足りないかも・・・・・・どう思う?
さにすと
大切な場所だと感じられるし、いいと思う。
リープル
ういうい、ハヌハヌさんたちから特別視されてるなら、滅多に見られない場所、というのをウリにするのはいいわね。
それに、ここが生薬や鉱石の採れる場所なら、一緒に集めてもよさそう。
採れたものをお土産に加工できれば、きっと喜んでもらえるわ。
ただ、さっきシェヌハヌさん自身も言っていたとおり、ここは集落から遠いし、魔物との遭遇を考えると少し怖いわね。
条件が整ったときだけの特別コースにしておくのがいいのかも。
シェヌハヌ
なるほど、なるほど。
さすが、ふたりともいろんなことに気づくもんだねえ。
おかげで、なんだか僕も楽しみになってきた!
すぐに案をまとめてみるよ。
リープル
これでひととおり案内役さんたちと話せたわね。
歩きどおしで申し訳ないけれど、いったん戻りましょうか、オック・ハヌに!
―シェヌハヌ
特別な体験、か・・・・・・。
なるほど、なるほど。
リープル
長いこと付き合わせちゃってごめんなさい。
おかげでみんなの不安も解消できたし、観光案内の内容も見直せたわ。
それに私も気づけた、大事なことに。
・・・・・・実は、ちょっと前からモヤモヤしてたのよね。
ウチが扱う観光旅行という商材は、形あるモノじゃない・・・・・・なら私たち、「何」にお金を払ってもらうべきなのかしら、って。
そこがふわふわしてると、あとでみんなが迷っちゃうもの。
それはきっと、お客様の「体験」なのよ!
理解してるつもりで、言葉にはできてなかったけど・・・・・・あなたと案内役さんの話を聞いて、ようやくわかったわ。
お客様が滞在中に体験することすべてが商材。
そして私たちは、その品質を高めるために努力しないとならない。
コザマル・カを好きになってもらうためにもね!
心の算盤が言ってるわ!
それさえ忘れなければ、きっとお客様に楽しんでもらえる、そしてお金も、たくさん落としてもらえるはずだって!
というわけで・・・・・・トラル旅行公司はこれから、お客様の体験を第一に活動していこうと思うわ。
早速、改めてトライヨラでの宣伝の手筈も整えなきゃ。
ハヌハヌさんの負担が大きくなりすぎないよう、費用対効果も見直さないとだし・・・・・・やることは山積みね。
でもまずは、ポガ停船所にある私たちの拠点を見に行かない?
ウケブさんや兄さんたちが頑張ってくれてるから、きっとそろそろ形になると思うの。
リープル
来たわね、さにすとさん!
拠点の建築、ちょうど資材の用意と設計がひととおり終わって、これから一気に組み上げるところなんですって。
完成したら、いよいよ旅行公司の開業も秒読み!
お客さんが来たら、楽しんでもらえるように、そして私たちも、ハヌハヌさんも、コザマル・カ全体が幸せになれるように・・・・・・
一緒に頑張りましょう、今後とも!!
ウケブ
さあ、皆の衆!
一気に仕上げてしまおうではないか!
―ユーベリ
商いに邁進しているときの我が妹は、まさに野山を爆走するアルパカの如き様相です。
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