「精霊がくれたもの」
パメカ
さにすと君、来てくれました。
引き続き、デモウェニ君からの依頼に取りかかりましょう。
たしかデモウェニ君は、次の物語はペルペル族から聞いたものだと言ってましたよね?
彼らの集落があるオルコ・パチャ・・・・・・そこで採れる素材を用いて、装丁部材を作ってみるのはどうでしょう?
そうすれば、まるで暮らしに溶け込む調度品のように、物語の世界観に合った装丁が作れると思うんです。
それでは、ペルペル族の物語を本にするため、「ペルペル様式の装丁部材」の準備をお願いします!
パメカ
オルコ・パチャ産の雪木綿布を軸とした、しなやかな部材・・・・・・ペルペル族の物語にふさわしいですね!
ああ、早く本を完成させて、その表紙を撫でたい!
デモウェニ
さて、今回語るはペルペル族の物語。
今でこそ、方々を旅する行商の民として知られているが、昔からそうであったわけじゃないらしい。
これはトライヨラが建国されるよりも、はるか昔。
ペルペル族が、オルコ・パチャから出ることなく、ひっそりと暮らしていたころの物語・・・・・・。
あるところに、キーブリという男がいた。
彼は小柄な一族の中でも、とりわけ身体が小さく、力も弱く、また病気がちであったそうな。
そんなわけだから、畑仕事でも役には立てず、アルパカの世話も満足にできなかったという。
だが、心優しく同胞たちは、決して彼は見捨てず、力がなくともできる仕事だけを与え、病を患えば看病した。
キーブリは感謝しつつも、自分の不甲斐なさを嘆いた。
しかし、優しさだけではどうにもできないのが世の常。
ある年のこと、オルコ・パチャの山々を襲った冷夏のおかげで、作物は実らず、家畜はやせ細るばかり・・・・・・。
ペルペル族は貯めていた食料を切り崩し、ときに家畜を潰して飢えをしのいだが、いずれ限界は訪れる。
そこでキーブリは、こっそりと村から抜け出した。
食料がなければ、食べる口に減らすしかない。
そういうことなら、力のない自分でも皆の役に立てるぞ!
・・・・・・こうしてキーブリは独り死ぬべく、聖なる山を目指した。
ところが山を登り始めると、行く手に精霊が現れ、これ以上は進ませないと立ちはだかった。
キーブリは事情を話し、どうかここで死なせてほしいと懇願した。
すると精霊は、キーブリの健気な想いに心を打たれ、ひとにぎりの葉を差し出して、彼にこう伝えたそうな。
その葉を里に持ち帰り、煎じて同胞に振る舞うがよい、と。
そして精霊の言葉に従うと、不思議と飢えが解消され、ひとりとして命を落とすことなく、翌年を迎えられた。
これが、マテ茶の始まりであったという・・・・・・。
今回も素晴らしい本ができましたね!
ありがとう!
さにすと
不思議な物語だ!
デモウェニ
もちろん、実話かどうかはわかりません。
けれど、実際にマテ茶は栄養素が豊富であり、飢えを防ぐ効果があるとも言われているんですよ。
パメカ
とにかく、互いを想い合うことが大切ということですね!
それが難題に直面したときに、思わぬ解決策をもたらすことになるのかも。
デモウェニ
さて、読み書きの勉強もあるので、今回はここまでにして、次は・・・・・・モブリン族のお客さんから聞いた物語にしようかな。
それでは、また!
パメカ
フフ、まだまだ素敵な物語が聞けそうですね。
また次もご依頼いただけるようですから、準備をお願いします!
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