トライテールの姉妹
激痛ハチ女を倒し、次はライトヘビー級現王者との対戦を控えるさにすと。 ヤーナ アルカディアの控え室から出ると、ワラワラとたくさんの人が集まってきた。 高揚した男性 興奮した少年 線の細い男性 粗野な男性 穏健な男性 不機嫌な男性 ヤーナ アンチができれば一人前とかいうわけわからん言葉もあるくらいだけど、アンチができるってことはそれほど注目が集まっているということだろうな。 ヤーナ ヤーナ ヤーナ ネユニ ヤーナ ネユニ ヤーナ ネユニ ネユニ ヤーナ ネユニ ヤーナ ネユニ ヤーナ スポンサーリンク
謎の空き時間にセコンドとしてブラックキャットことヤーナが就任してくれた。
ここでも高度な人たらしを魅せたさにすとは、一時ヤーナが所属するジムへと向かう。
それじゃあ、ウチのジムに案内するよ。
ジムってのは要は体を鍛える場所で、ウチみたいに闘士が所属しているところもあるんだ。
各闘士は所属団体があるんやね。
変な団体との繋がりないよな?頼むで!
新鋭勢力であるさにすとを一目みようと集まってきたんだろう。
ただ、なんだ、悪い気はしないな。
あんた、アルカディアの、生身の挑戦者「さにすと」だよな!?
魔物の魂も使わずに勝ち上がるなんて興奮したぜ!
これからも応援してるから、がんばってくれ!!
おう、ありがとうな!応援よろしくな!
試合中継を見てビックリしたよ!
機械兵と戦っていたお姉さんが出てるってね・・・・・・!
あれから、お姉さんはボクのヒーローなんだ!
次の試合でも活躍してくれるって信じてるよ!
やっぱりこういうスポーツ?選手って子供に夢を与える仕事なんよ。
僕をみて大きく育ってくれよ少年。
よくも、よくも・・・・・・ボクたちのハニー・Bを・・・・・・!
お前なんか・・・・・・大ッ嫌いだ!
ハニー•Bはお前らのことなんて全く見てないけどな、勘違いすんな。
あの女は自分のことしか見えてないんだから。
ケッ、ぽっと出の雑魚が調子に乗るなよ!
次の試合でケチョンケチョンにされちまえ・・・・・・!!
ごめんな、ぽっと出なのに強くて、ごめんなぁ。
お前にはできないことやっちゃって、ごめんなぁ!
いやはや、口汚いファンもいたものだね。
贔屓の闘士が負けて鬱憤が溜まっているんだろうが・・・・・・。
おっと失礼・・・・・・。
僕は、ちょっとした物書きでね。
今度時間があるときにでも、キミのことを取材させてくれ。
おぉ、有名人って困るねぇ。
取材って、この世界の週刊誌的な?
あっ、そこにいるのはブラックキャットじゃないか!
なんだって、負けた相手とつるんでるんだよ!
そういう甘チャンなところが、敗因なんじゃないのか?
やっぱり、妹じゃなくて姉さんの・・・・・・「ウィケッドサンダー」の試合が見たかったぜー!
お姉ちゃん?ウィケッドサンダー?
確かに負けた相手とつるんでたら八百長的なきな臭い何かを想像しても仕方ないよな。
でもちゃうねん、ブラックキャットはさにすとに「魅了」されてん、すまんな。
キリがないね、早くここから離れよう。
時間あるからファンサービスしててもいいんちゃう?
それとも自分のことを言われ始めたから逃げるん?
逃げることはとても大事だけどね!
そう考えながらヤーナが導くがごとくジムへと走り去ることになった。
もうちょっとファンサービスしてもよかったのにな!
何とか撒けたみたい。
ウチのジムはすぐそこだよ。
ここが、ウチのジム「トライテール」さ。
もっとも、いま所属している闘士はワタシだけなんだけどね。
ここは、私の家でもあってさ、1階が住居で、地下がジムになってるんだ。
さあ、遠慮なく入って入って。
ほぉう、ソリューション•ナインが誇る最新の設備ってわけかい。
近未来って感じするのにベンチプレスはしっかりアナログに存在するんだな。
ジムの様子を伺っていたら奥から幼女が走ってやってきた。
ネユニ
はじめまして、姉がお世話になりました。
ヤーナの妹、「ネユニ」と申します。
挨拶がしっかりできるいい娘だ。
ヤーナの妹ちゃんか。
お世話になりましたって、私はその人にこっぽどく負けたんだよ・・・・・・。
私たちは三姉妹でね。
見てのとおり、ヘイザ・アロ族さ。
ま、親はふたりとも死んじゃってるんだけど・・・・・・。
さっき言われてたお姉ちゃんと合わせて3姉妹親なしか。
お姉ちゃんがお母さんを演じてしんどくなって出ていくってパターンか?
30年前、両親はヤースラニ荒野を訪れたときに、運悪く障壁の中に閉じ込められたって聞いてます。
レギュレーターには抵抗があったみたいで、着用しないまま、駆除人の仕事をしていたそうなんです。
だから危険な魔物に襲われたときにも、蘇生できずに・・・・・・。
おぅふ、あんま初対面の人に死んだ理由を詳細に伝える必要はないよ。
またなそういうはなしはおいおいな、関係性ができてからな、こっちが聞いた時に答えてくれるのがいいんやで?
ま、そういうこと・・・・・・。
私がアンタに興味を持ったのも、うちの親が魂の利用を拒んで、生身で仕事することに拘っていたのを思い出したからなんだ。
とはいえ、私たちにそこまでのこだわりはなくてね・・・・・・両親の死後、レギュレーターを着けることにしたんだよ。
上の姉さんから、死んじゃったら元も子もないって言われてさ。
親のことを忘れずにいられてるのは、ふたりがレギュレーターを着けずに死んだから。
それがいいことなのかどうか、わからないけどね・・・・・・。
レギュレーターをつけることで死んでも蘇生が効く体にするか、レギュレーターが悪だとしてつけずに死んでいくか、という選択か。
親としての責任取るためには自分がいやでも子供達のためにレギュレーターをつけるという選択肢はなかったんかね?って思っちゃうな。
直接的な原因じゃないかもしれないけれど、結果として自分たちは死んで子供達だけ残されるっていう最悪の結末になったわけだからね。
私は生まれて間もなかったので記憶はありませんけど、両親の死については、姉に聞かされてきました。
だから生身で戦うあなたの姿を見てると、ヒヤヒヤしてしまって。
さにすとさん、不躾なことを言いますが・・・・・・試合中に命を落としたくなければ、蘇生のためだけにでも、レギュレーターを着けることをお勧めします。
まあそうなるわな。
でもここだけの話死んでも蘇生受けられる身体なのよ、ごめんな。
そんな目で見ないでくれw
魂の利用に否定的な人に、そんなこと言っても無駄だよ。
父さんと母さんも、頑なに拒んでいたからね。
私たちとは育った文化が違うのさ。
ま、いまはそういう話よりも・・・・・・
せっかく二試合目にも勝ったんだ、祝杯をあげないか?
エナジードリンクぐらいしかないけどさ。
そんな強く否定してたおぼえはないんだけどなw
ヤーナ姉、負けたのに祝杯なの?
妹結構鋭いこと言うなw
プシュッとしたエナジードリンクが、渇いた喉を潤••••••しません。
ヒカセン、何があっても他人から出された飲み物には口をつけないようにしています。
ましてやさっき出会ったばっかりで、次また試合が控えているという状況ではね!!
バレないようにそれとなく缶を傾けながら談笑することにしました。
ごめんね、君たちが悪いわけじゃないんだ。
ヤーナ
ところで、上の姉さんの話をしてなかったね。
さっきの観客も話してたから、気になったんじゃないか・・・・・・?
姉さん、「ユトロープ」はヘビー級の闘士だったんだ。
ユトロープ?
「ウィケッドサンダー」とか言うてたけどあれか、ブラックキャット的なファイトネームか。
両親の死後、まだ小さかった私たちを養うため、アルカディアの闘士になって、それはもう大活躍だったよ。
彼女は幼いころから文武両道でさ。
闘いぶりは駆除人だった両親譲り、その上、エレクトロープの扱いにも長けていたんだ。
やっぱりそういうパターンになるよなー。
妹達を育てるのは私しかいない!って使命感に燃えちゃうお姉ちゃん。
いいお姉ちゃんだよ、まったく。
ユト姉の紹介映像があるので、お見せしますね。
リングネームは「ウィケッドサンダー」。
雷馬の魂を注入し、エレクトロープ製の装備に雷の力を溜めて、変幻自在に闘うことで有名だったんですよ。
雷馬?
なんかいやな予感するな。
これちゃうん。
イクシオンと合体するやつ。
私も、彼女に手ほどきを受けてたから、闘いに関しては、それなりに自信があるけどさ・・・・・・。
エレクトロープを使った戦闘スタイルは、真似できないね。
ただ・・・・・・ある日突然、姉さんは失踪してしまった。
姉妹の私たちにすら何も言わずにね・・・・・・。
もう抱えきれなくて逃げ出しちゃったって感じか。
まあ仕方ないよ、それに関しては。
誰も責めることはできないよ。
ユト姉は、もう少しで引退だったのにね。
引退?
ああ、闘士たちはみんな若いうちに引退するんだ。
身体が変異するほど大量に魔物の魂を注入して闘うのは、やっぱり負荷が大きいんだよ。
だから、20歳まで闘士を続けた者は、エバーキープ高層にある高級居住区への移住権をもらって引退。
あとに待つのは、悠々自適の生活・・・・・・!
意外と手厚いんやな。
20まで身体を犠牲にすれば、悠々自適に高級住宅街で暮らせるだなんてな。
そんな上手い話があるんかよー。
だってのに、幸せな暮らしを手に入れる直前に消えてしまった。
いったい、どういうつもりなんだか・・・・・・。
・・・・・・と、思い出話はここまで。
そろそろ次の試合が始まる頃合いだし、アルカディアに向かうとしようか。
まあ複雑な事情が入り混じってるんだろうな。
お姉ちゃん問題は後々絡んできそうな気がするな。
さにすとさん、がんばってください!
そして、どうかお気をつけて・・・・・・。
おうよ、幼女!
大丈夫、ヒカセンは死なないから、そういう設定だから!
よーし、ここからは私がセコンドとして、精一杯アンタをサポートするよ!
そうだな、とりあえずは目先の元チャンピオンとの勝負に集中しようぜ!