「不思議なお話を」
パメカ
いらっしゃい。
キミは外つ国から来た、熟練の裁縫師なのですね?
改めて・・・・・・私はパメカ、この筆記工房の店主です。
うちの仕事を手伝ってくださるのでしたら大歓迎ですが、その前に、不躾ながらひとつ確認を。
キミ、文字は読めますか?
さにすと
三度の飯より読書が大好きだ。
パメカ
素晴らしい、仲良くなれそうですね!
私も先日、歩きながら読書に熱中していたら、うっかり海に落ちてしまいましたよ、フフフ・・・・・・。
実は、ここトライヨラでは、トラル公用語を話せるものの、文字の読み書きまではできない、という人が多くて。
そんな方々のために、公的文書や手紙の代筆をするのが、ここ「パメカの筆記工房」の主な業務なんです。
ところが、少し前にちょっと変わった依頼がありましてね。
お客さんが語るお話の内容を、1冊の本にしてほしい・・・・・・と。
まだどんな書物にも記されていない物語・・・・・・!
それを文字に起こして、記録として残そうだなんて、なんとも心躍る話ではありませんか!
ただ、簡単には依頼を受けられない事情がありまして・・・・・・。
普段の業務に使う用紙や便箋は上備していますが、製本に欠かせない「装丁」の技術がないんです。
そこでキミの出番です。
熟練の裁縫師の技術で装丁を担当していただければ、この依頼を、胸を張って受けられるでしょう!
どうか、私と一緒に、物語の製本を引き受けてもらえませんか?
さにすと
ぜひ協力させてくれ。
パメカ
ありがとうございます!
では製本を引き受ける旨、さっそく伝えにいきましょう。
依頼主はシャバーブチェに勤めている「デモウェニ」君です。
私は店を空ける支度をしていきますので、キミは先に向かっててもらえますか?
デモウェニ
ああパメカさん、いらっしゃい。
パメカ
ごきげんよう、デモウェニ君。
例の依頼、引き受ける準備が整いましたよ。
こちらのさにすと君に、装丁をお任せすることになりましたので、この人なら間違いないと私の直感も告げています!
デモウェニ
そりゃあいい、ぜひお願いするよ!
僕はデモウェニ。
サカ・トラルの辺境からトライヨラにやってきて、まだ日は浅いんだけど、この店で働かせてもらってます。
酒場には各地から旅してきた人々が集まるものだから、接客中にいろんな話を聞かせてもらうことがあるんですが・・・・・・
信仰する神様や精霊にまつわる伝承はもちろん、逸話や訓話、それから子どもに聞かせるおとぎ話まで。
実に多種多様で、驚くほどですよ。
で、そうして教えてもらった話を、別のお客さんからせがまれて、僕が披露することもありましてね。
結構、評判がいいんです。
ただ、人の記憶は色褪せるものでしょう?
いつかは細部を忘れてしまうはずですから、今のうちに、本として残しておきたいと思うように・・・・・・。
けれど、うちの一族では文字を使う文化がなかったから、パメカさんと同じトナワータ族でも、僕は読み書きできません。
それで筆記工房を訪ねたってわけでして。
パメカ
デモウェニ君が語る物語を、私が片っ端から記録していく・・・・・・いわゆる口述筆記という形式ですね。
手紙の代筆などではよくある依頼です。
デモウェニ
もちろん、僕自身も文字の読み書きを勉強するつもりですよ。
本を作ってもらっても、読めなければ意味がありませんから。
ああ、それとよければ・・・・・・ぜひあなたも口述筆記に立ち会ってください。
きっと、装丁を作るにあたっての参考になると思います。
なにより各地に伝わる物語は、聞いていて楽しいはず!
ぜひ一緒に本を作りましょう!
パメカ
さて、いつから始めます?
こちらは、ほかの依頼も片付いたところなので、今ならすぐに対応可能なのですが・・・・・・。
デモウェニ
じゃあ、仕事が終わったらそちらに伺います。
パメカさんたちは、筆記工房の方で少々お待ちください。
―デモウェニ
仕事が終わったら筆記工房に伺いますので、「パメカ」さんと少々お待ちください。
パメカ
工房という名のとおり、作業はここで行います。
長編の物語を書き留めるために、紙もインクも、たっぷり用意しましたからご心配なく。
デモウェニ君が来るまでに準備をしておきたいところですが・・・・・・キミにはキミの事情があるでしょう。
ご都合がよろしければ、お声がけをお願いします。
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