「便利な金荒物屋」
ラルソジ
よう、さにすと。
顔を出してくれて助かるよ。
この前、お客が宣伝してくれたおかげで、葦苅鎌を手早く仕上げたって噂が広まったらしくてな。
また大口注文が入ったんだが・・・・・・協力してくれるか?
パパーニ
あの、今回の依頼品はどういったもので?
ラルソジ
・・・・・・チーちゃんの「トルティーヤプレス」だ。
パパーニ
えっ・・・・・・チーちゃん・・・・・・って誰・・・・・・?
ラルソジ
「タコスのチーちゃん」だ。
あそこはトライヨラでも一、二を争う人気店なんだ。
パパーニ
「トルティーヤプレス」って、そう何個も必要になるものでしたっけ・・・・・・?
私が街での生活を知らないだけ・・・・・・?
ラルソジ
あの店用のトルティーヤを焼いている工房で、調理器具を一新することになったらしい。
予備を含めて重厚なプレス器を大量に用意してほしいそうだ。
さにすとには引き続き・・・・・・そうだな、6つほど作ってもらいたい。
残りは俺とパパーニでなんとかしよう。
先方は、うちの店の仕事の早さを見込んで選んでくれたんだ。
なるべく早めに作業に入ってもらえると助かる。
パパーニ
はい!
またお客さんに喜んでほしいから・・・・・・頑張るぞおお!
―パパーニ
プレス器はトルティーヤを均一な厚さにできることが、なによりも最重要なんだとか!
これは精巧な板金技術が必要だぁ・・・・・・!
ラルソジ
おお、もうできたのか、助かる。
この適度な重量感と、歪みのない盤面ならきっと、最高のトルティーヤができるはずだ。
品物が揃ったんで、さっそくチーちゃんに来てもらった。
チーソジャ
どうも、「タコスのチーちゃん」店主の、チーソジャでございますー!
トルティーヤプレスの製作、助かるわぁ!
今までは木製のプレス器を使ってたんだけど、ちょっと油断して力を入れすぎると、すーぐ壊れちゃって!
金属製のプレス器なら、もう安心だわね!
ラルソジ
ああ、使い倒してやってくれ。
チーソジャ
ええ、もちろんですとも!
おたくのお店は仕事も早くって、ありがたいったらないわぁ。
これからも調理器具の注文はおたくに頼みます!
じゃ、こちらを工房へ運び込まなくてはいけませんから、このあたりで失礼いたしますわぁー!
皆さんも、タコスを食べに来てちょうだいね!
ラルソジ
さにすと、今回もありがとう。
あんたのおかげで、なんとか店がまわってるよ。
パパーニ
さにすとさん、ラルソジさん・・・・・・。
ごめんなさい、私、今回も手が遅くて、ひとつしかできなくて・・・・・・。
ラルソジ
パパーニ・・・・・・あんたは精いっぱい仕事に向き合ってるんだろう。
それはわかっている。
だが今後もうちで働くのなら、課題は自覚しているとおりだ。
本来であれば、さにすとに頼んでる分も、作れるようになってもらわないと困る。
そばで見ているかぎりだと、ひとつに時間をかけすぎているように思うが・・・・・・。
パパーニ
す、すみません!
前回お礼を言ってもらえたのが嬉しくて、もっと喜んでもらいたいと思って・・・・・・
その、軋みや歪みが出ないようにしたり、長く使えるよう手入れをしやすくしたりと考えて・・・・・・いろいろ工夫しているうちに、時間が・・・・・・。
ラルソジ
いい品を作ろうとしているのはわかったが、客にとって普段使いの日用品は、大抵すぐに使いたいものだ。
次からは意識してみてくれ。
さにすとも、引き続き頼む。
あんたの技術を頼りに・・・・・・してばかりじゃダメだが、いましばらくは力を貸してくれ。
―パパーニ
すみません、私どうしても作業が遅くて・・・・・・。
スポンサーリンク